2025年5月19日(月)

木の家が心地よい理由とは?

木の家が心地よい理由とは?

樹種によって香りはさまざまですが、一般的に木の香りを「すっきりしている」「心地いい」と感じる方は多いのではないでしょうか。それはいったい、なぜなのでしょう? その感覚は、単なる経験や思い込み、好みによるものなのでしょうか?

今回は、「木の家」が持つ心地よさの秘密についてご紹介します。

東京大学の恒次祐子教授は、生後3か月までの赤ちゃんを対象に、木の香りを嗅がせるという実験を行いました。まだ木の香りを知らず、森に入った経験もない赤ちゃんには、思い込みや好き嫌いといった感情はありません。そんな彼らに木の香りを嗅がせたところ、心拍数や脳の血流に変化が見られたそうです。つまり、木の香りによる心地よさには、生まれつきの感覚が関係している可能性があるのです。

さらに、松やヒノキに多く含まれる特定の香り成分を嗅がせたところ、心拍数が低下し、脳が活性化するという結果も得られました。実際に、香りに反応して泣き止んだ赤ちゃんもいたそうです。このことから、私たちが木に癒しを感じるのは、先入観がなくても自然な反応であると考えられます。

恒次教授によれば、「大人でも同様に、木の香りによって心拍や血圧が下がり、副交感神経が高まりやすくなります。これはまさに『リラックスしている状態』であり、木の香りに癒しを感じるのは自然なことです」とのことです。

香りだけでなく、木の手すりや棚板などの“触り心地”に関する研究も進んでいます。たとえば、金属やプラスチックと比べた際、木の触感はどのような影響を与えるのか。針葉樹と広葉樹の違いや塗装の有無、塗膜の厚さなど、さまざまな条件で比較されました。

「木は熱伝導率が低いため、触っても『ひやっ』とする感覚が少ないんです。逆に金属は熱伝導率が高いため、冷たさを強く感じやすく、実際に触れたときの血圧上昇も大きくなります」

たとえば、あたたかい部屋から出て、寒い廊下で金属やプラスチック製の手すりに触れたとき、木に比べて冷たく感じるのはそのためです。こうした感覚の小さな差でも、毎日積み重なると無意識のストレスにつながることがあるかもしれません。

さらに、視覚的な印象も重要です。無垢材を見たときと、木目調のプリント材を見たときとでは、心身への影響に違いはあるのでしょうか?

ある実験では、本物の木材でつくられた部屋と、木目をプリントしたシートを貼った部屋にそれぞれ人を入れて比較しました。木だと信じている間は両者に大差は見られなかったものの、プリント材の部屋が「本物ではない」と知らされると、疲労感が増し、作業成績も下がる傾向が見られたそうです。人の心理は、知識によって変化するというのは興味深いですね。

現在、木質空間が人体に与える影響についての研究はさらに進められています。「なんとなく気持ちいい」と感じていたその理由が、科学的に明らかになりつつあるのです。

木の家がなぜ心地よいのか。その理由を知ることで、これからの住まいづくりのヒントになれば幸いです。


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