エピソード3

⻑年の夢を実現した古⺠家再⽣

長年の夢を実現した古民家再生

―古民家を再生しようと思ったきっかけは?
自宅の隣に祖父母が住んでいた古い家があり、盆や正月に仏壇をきれいにする以外は物置になっていたんです。以前から、こんなにきれいな家が朽ちて傷んでいくのはもったいないと思っていて、直したくて10年ほど前に大阪から戻ってきました。

―どんな家だったのですか?
大黒柱の様子から築200年、江戸時代の後期の建物と聞きました。この地域で大きな火事が2度もあったので詳しい資料などは残っていませんが、この部落の入り口の家だったことから、2度目の火事の際に1軒だけでも守ろうと、近くの村人が畳を川に投げ込んで水を堰き止め、バケツリレーで火を消したと聞いています。太い梁や柱が昔の技法を伝えています。

―古民家にもともと興味があったのですか?
関西に住んでいたころに、大工の職人さんの木の継ぎ方や家の構造を見るのが好きで古い家に興味を持ちました。ちょうど日本民家再生協会が「民家の学校」というワークショップのような活動を約1年間毎月開いていて、月1回は関東に行っていました。もちろん、趣味です。

―創伸との出会いは?
祖父母の古民家を何とかしたいという思いを抱いて故郷に帰ってきて、古民家再生の業者をネットで探していたところに、創伸を見つけました。しかも、社長の肩書に「民家再生協会副理事」とあり、住所は御来屋。もう、ここだと思いました。でも、帰って1年間は一人で片付けをしていました。自分でやってみたいという思いがあったので、梁を隠していた天井のべニヤ板を剥がし解体を始めました。鼻の穴を真っ黒にしながら。

―古民家再生ワークショップを企画
解体の途中で創伸の社長さんに相談して家を見に来ていただき、構造上取ってもいい柱などを教えてもらいました。たたきと土壁は、数年前に創伸にもご協力いただいて、ワークショップで造りました。昔は茅葺の葺き替えは村人が総出でやっていた、土壁の中の竹木舞を編むのは女性の役目で、子どもも一緒になって土を壁に塗り込んでいたという話を聞き、昔の家づくりをみんなでしたくなりました。山から竹を伐り出し、参加者とその竹で土壁の中の竹木舞を網み、土を塗りました。

再生を経て、未来に向けて思うこと

―焦らずのんびり取り組んだ、至福の時間
願った家は、将来的に腐る家。私は、職人さんの技術に対するお金は惜しまないでいたいと思い、創伸にお願いをしました。基礎工事のほか、構造上必要なところに柱を入れたり、天窓を付けたりしてもらいました。工期は特に決めないで、資金が貯まっては依頼、というスタイルです。残すための古民家再生でしたので、焦らずのんびりと取り組みました。職人さんの技をみている2年間は、至福の時でした。

―今後の活かし方は?
中高生の頃は、今風の家に憧れもあって、古い家は壊して新しい家を建てたいと思う時期もありました。でも今は、来てくれた人から「いいねー、落ち着く」と言ってもらえるのが嬉しくて、再生してよかったと思っています。イベントでも貸しますし、誰かが、疲れたなとか癒されたいなと思ったら、ちょっと来られる空間であればいいなと思っています。自然に囲まれたパワースポット的な場所として。

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