伝統構法について
百年後に
そのよさを知る
伝統構法と在来工法のちがい
「伝統構法」という言葉を聞いたことがありますか?
日本古来の建築技術で、神社仏閣など、伝統的な建造物に見られる工法です。
現在、木造の住宅を建てるときには、ほぼ「在来工法」が採用されています。在来工法は、西洋建築の思想を取り入れた、大量生産に適した工法です。施工が簡単で、壁に合板、筋交い、結合部には金物を使って固定します。
古来、日本に伝わる「伝統構法」は、木組みの柔軟性を活かした木造工法です。全体の構造を木組みで仕上げ、木に仕口や継手という凹凸を加工して使い、金物は使いません。100年後も住み続けられる頑丈な建物です。
戦後、多くの建築物は復興を背景に安価で早く建てられる在来工法に取って代わり、伝わってきた日本の建築技術は、今や地方の豪農屋敷や神社仏閣などにしか見ることができなくなりました。たった数十年で、千数百年の歴史を持つ日本の伝統的な技法は、西洋から入った在来工法に取って代わってしまいました。
職⼈の労⼒の塊ともいえる伝統構法と在来⼯法のちがい
さて、伝統構法と在来工法の基本的な違いがわかったところで、さらに製材について比べてみましょう。
在来工法では、一律に機械でカットされた製材を使います。これをプレカットと言います。工場で、1日から2日で、あっという間に家を建てる建材が揃います。工期も半年から長くても1年以内で完成する家がほとんどです。
創伸は、家を建てるために山の木を丸ごと買ったり、丸太の木を買ったりして、機械ではなく手でカットします。伝統構法では、これを手刻みといいます。木の皮を剥ぎ、1本1本手作業で建材に仕上げると、半年かかるときもあります。手刻みした木は時間をかけて乾燥させるので、材料を揃えるだけで1年から2年はみておく必要があります。まさに、職人の労力の塊です。
大工に備わっていた
木を見る目とデザイン力
昔から人は、曲がったものやねじれたもの、太くてどっしりしたものに癒しを感じてきました。家の大黒柱や大きな梁は、大工が山に通い、成長の具合や曲がり具合、木の癖などをしっかりと見定め、木組みをイメージしてから切り出していました。そうした癖の強い木は、現代のプレカット加工はできませんから、当然、手作業になります。昔の大工には、木組みのデザイン力が備わっていたのです。
見直されつつある伝統構法
近年、その伝統的な構法が少しずつ見直されてきています。現在の建築基準法は西洋建築学の考え方の上に成立しているので、構造計算により強度を確認するなど、伝統構法の建築物申請に時間がかかります。
ところが、大きな地震の後に残った建物から古来の日本の建築様式が垣間見えたり、環境への負荷が少ないことがわかったり、文化的側面などから価値を認められ法的にも見直しが進んでいます。凄腕の職人さんがまだいるうちに、もっと伝統構法が身近なものになることを願っています。