9 もっと住まいを知る 断熱についての考え方
「断熱」という言葉を聞いたことはありますか?
断熱とは、字のごとく熱を断つこと。住宅においては、夏は熱さを、冬は寒さを防いで家全体の温度差を少なくし、快適な住まいを実現させる役割があります。そして、そのために使用する建材のことを「断熱材」と呼びます。一般的に使われている断熱材は、ガラス繊維でできたグラスウール、発泡プラスチック系の硬質ウレタンフォーム、新聞紙をリサイクルしたセルロースファイバーなどがあります。それらの断熱材を屋根や壁に敷き詰めたり、吹き付けたりして施工します。山陰は雨の多いエリアなので、本来は湿度をコントロールする家ということを一番に考えなくてはなりません。しかし、調湿機能のない断熱材が山陰でも、よく使われています。
よしとされている高気密・高断熱の住宅
社会全体でサステナビリティーが課題となった今、住宅建築においても、「エネルギー資源のむだ遣いを防ぎ、温室効果ガスの排出を抑制し、地球環境に優しい」という観点が求められています。現在、断熱性は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく評価に従って等級や、Ua値・C値といった数値で表わされ、「高気密・高断熱住宅」がよしとされています。そのため、壁を多くし建物の気密性を高めて空気の出入りや熱の移動を減らした設計が採用され、エアコンを年中同じ温度に設定して、空気がその状態で変わらない世界を生み出す仕組みが、多くを占めています。
自然の一部である人間が、
不自然になっていく住まい
しかし、断熱は等級や数値を出すだけが役割でしょうか?年中均一な温度をエアコンでつくる住空間は、本来の人間の住まいでしょうか? 気密性や断熱性といった機能ばかりを求めると、いつの間にか無機質なものばかりが人工的に造られて、そこには自然ではない世界が生まれてしまいます。そういうところに人が住み続けたとき、体は見えない影響を受け、本来、人がもって生まれた五感も鈍くなってくるのでは?とさえ思うのです。自然の生き物である人間が、不自然になっていく住まい本当にそれでいいのでしょうか……。
通風と調湿でコントロール
自然界と調和のとれる住まい
山陰は春夏秋冬があり、その土地に生きる人々は季節の温度を体感したり、四季の風や香りを感じたりしながら生活してきました。窓を設けて自然の風をうまく取り込み、春と秋にはエアコンなどの機械を使わずに工夫して過ごしてきました。そして建材に湿度を保ったり逃したりする天然素材の木を使うことで、調湿をはかっていました。通風と透湿によって住まいをコントロールし、自然と向き合いながら暮らしを営んできたのです。ですから、断熱材は湿度が通る素材を選定することが大切で、そういう素材を使ったときは、室内に居ながらにして自然の中と同じ空気感で過ごすことができ、自然界と調和がとれると考えています。
「家の中に森をつくる」という考え方
創伸が理想とする断熱は、環境を考えた温熱、断熱思考で、「家のなかに心地よい森をつくる」という発想です。それを実現するのが、透湿性のある木繊維断熱材シュタイコです。環境先進国ドイツで開発された針葉樹の端材が原材料の断熱材で、家を覆うことで森のような快適さを実現できます。また、温まりにくく冷めにくい性質があるので、冬だけでなく、近年の40℃近い夏の暑さにも対応できます。加えて、100年、200年の間、状態や性能を保ち、再利用もでき、最後は土に還すこともできます。そんなシュタイコを使い目指すのは、夏は風通しだけで、冬は太陽の日差しだけで快適に過ごせるような家。つまり、石油を燃やさず、電気を使わないで、自然のエネルギーを最大限活用する暮らしです。これこそ、環境に配慮する建築ではないでしょうか?