5 もっと住まいを知る 住育、知っていますか?
住まいから学ぶ人間力
近年、食事や食材、農業などから子どもの生きる力を育む教育が重視されるようになり、それを「食育」と言っています。それでは、「住育」はどうでしょうか?学校でも、生活や家庭科の授業はありますが、「住まいの手入れの仕方」や「暮らし方の技術」のような勉強はほとんどありません。学ぶのは、家庭です。普段から子どもは大人をとてもよく観察しています。親が木の様子を見て手入れをしようとしていたり、季節に合わせて窓を開閉したり、陽の入り方を調整したり、湿気を気にしたり。そうした姿を見たり感じたりしながら、五感をフルに働かせ、暮らしの知恵を身につけているのです。さらに、木、石、土、紙など自然の素材でできた家はいろいろな表情があり、子どもは手で触った感触や匂いが大好きです。ツルツル、ザラザラ、カサカサ、ブツブツなど、子どもの頃に触れた感触は一生消えることなく、豊かな感性を磨いてくれるのです。
手入れを楽しみ、輝きを増す家を目指して
家の寿命は、日本の家が30年であるのに比べ、アメリカが50〜60年、ヨーロッパが80年と言われています。何が違うのでしょうか。その理由の1つとして、欧米の人は日常的に家の手入れを楽しんでいるからだとか。今や最新のテクノロジーを駆使した家も登場していますが、そのような家は30年後に大掛かりな修繕が必要になるかもしれません。一方、日々の暮らしのなかで少しずつ手入れをして輝きを増す家、100年後もずっと住み続けることのできる家。どちらが子どもたちにとっていいのでしょうか?