“創伸の根っこ”
合理化された現代の家と
知恵の詰まった昔の家
昭和時代の初期までの暮らしは、⾃然の循環のなかで成り⽴っていました。⽕を使って暖を取り、料理を作り、⾵呂を沸かしていました。太陽の昇降とともに1⽇があり、四季の移ろいのなかで⼈は⽣きる知恵を伝授して⽣きてきました。⼟地の気候や⾵⼟を知り尽くした家に、敬意をはらいながら⽣きてきたのです。
⼀⽅、現代の暮らしは、どうでしょうか。
仕事も家事も、何もかも合理性が求められ、暮らしは機械でコントロールする時代になりました。⼈の⽣活パターンに合わせた家に住んでいると、地球上において⼈は⾃然の⼀部であることを忘れ、本来持って⽣まれた本能や機能、感性を失ってしまうように思えてなりません。近代化に⼿を出してしまって楽を覚えた現代⼈は、先⼈から受け継いだ⼤切な事や物、考え⽅の指標を失いつつあるのではないでしょうか。
人間も自然も同じフィールドで
共存共生しているという考え方
たとえば、照明ひとつとっても、暗いところがあるとクレームが入ります。同じ照度、同じ壁紙を貼ることによって明暗をつけないようにするとノンクレームになります。寒い、熱い、暗いということにデメリットを感じている人が多いのは、建築業界の常識を刷り込まれていると言っても過言ではありません。
山の中には暗いという心地よさもあれば、明るいという心地よさもあります。風を通すほうがいいと人は思っているけど、そうでない場所もあるかもしれません。私たちは、それをメリハリとして住まいに取り入れながら、「人間も自然も同じフィールドで共存・共生している」という考え方の上に立ち、家づくりをしています。
根本から見直すべき日本の家づくり
近年は、SDGsという⾔葉をよく⽿にします。持続可能な開発⽬標を掲げて世界が変わるのであれば、もっと前に変わっていたと思います。建築の世界に⽣きてきて思うことは、作り⼿が持続可能な家づくりにもっと早く気付くべきで、根本から⾒直しをかけない限り何も変わらないということ。
これは、⼀軒の⽥舎の⼯務店のつぶやきかもしれません。でも、⾃然との共⽣、循環を考えた家づくりをしている⼯務店があることで、その周りの⼈は少しずつでも変わっていくと信じたいのです。
そして、50年後、100年後、本物の素材は経年変化によって味わいや美しさが出ますが、⼈⼯的なケミカルなものは時間がたてば壊れていくということをわかってもらえるのではないでしょうか。
完成後も成長を続ける家
100年後もずっと住み続けられる家
創伸の住宅は、完成したときが100ではなく、完成してからでも成長していく住宅です。完成が100であれば、そこから劣化していきます。100年前に建った古民家を見たときに美しいと思うのは、日本古来の風合い、味わいが増しているからです。山陰は、昔からの伝統や歴史、人がつながっています。都会は、捨てたものが多すぎて、元に戻すのには労力と時間がかかります。そういう意味で、田舎は守ってきたものがまだ残っているのです。それは、お金には代えられない宝です。都会の人々は、そこに魅力を見出しているように思うのです。
地球に建物を建てるということは…
自分たちが行きつくところは、自然をできるだけコンパクトなエネルギーにして、使い手の負担を極限まで抑えるという住まいです。石油を燃やさず電気を使わないで暮らすことが本当の環境建築の在り方だと思っていて、たとえば、冬の天気のいい日は薪ストーブをつけなくても、南側の壁に蓄熱させた日射を放熱させて過ごせるような仕組みを実現することです。そして、100年、200年後、建築資材の木も断熱材も地球に還すことができたり、再利用したりすることを目指しています。
戦後、日本は海外の暮らしに憧れ、安い建築資材をいいと思い込み、土に還る家を手放してしまいました。でも、もう一度、気づいてほしいのです。建物を建てるということは、地球の循環にひとつの役割を果たしているということに。そのような暮らしこそが、心豊かに生きることであるということに。
株式会社 創伸
代表取締役 北村 裕寿